ホーム中央誘導ブロックの正しい理解のために

~安全性の向上を目指して~

本稿は、当会が求めている「ホーム中央の線状誘導ブロック」(以下、ホーム中央ブロック)について、目的や必要性、そしてよく寄せられる懸念への回答を整理し、正確な理解を広めるためのものです。

ホーム中央ブロックは、視覚障害者がより安全に駅ホームを移動できるようにするための重要な施策ですが、その一方で、誤解に基づく反対意見も少なくありません。

そこで、これまでの議論を踏まえ、できるだけわかりやすく説明します。


1. ホーム中央ブロックとは何か

ホーム中央ブロックとは、階段から最寄りの車両ドアへ向かう既存の線状誘導ブロックの延長線上に、ホーム中央を線路と平行に歩ける触覚ガイドを追加設置するものです。

これにより、ホーム端から離れた安全な位置に新たな歩行ルートが生まれます。

 

特に強調したい点は次の3つです。

 

① 既存のホーム端の点状警告ブロックは撤去しない

現在の点状警告ブロックや、階段から最寄りドアまでの誘導ブロックはそのまま残ります。

そのため、従来どおりホーム端の警告ブロック沿いを歩きたい方は、推奨はできませんが、引き続きそのルートを利用できます。

 

② 売店や柱などの構造物を避けるために誘導ブロックを蛇行させない

構造物の手前ではT字状の警告ブロックで誘導を止め、構造物の奥で再び直線状に敷設します。

誘導ブロック自体が「コ」の字に曲がることはありません。

利用者は、必要に応じて構造物の壁面を伝って迂回し、再び中央ブロックに戻る形になります。

 

③ホーム中央ブロックは歩行の選択肢を増やすもの
「端を歩くのが怖い人には、中央という新しい安全ルートを提供し、従来の歩行方法に慣れている人にはそのままの歩行を可能にする」ものであり、歩行の選択肢を増やすための整備です。

 

2. ホーム中央ブロックが必要とされる2つの理由

(理由その1) 転落事故の多くが線路と平行に歩いているときに発生

国土交通省の調査では、視覚障害者の転落事故の 63.5% が、ホーム上を線路と平行に歩行中に発生しています。典型的なケースは以下の2つです。

 

ケース1・ホーム中央付近を歩いていて斜めに進み、警告ブロックを越えて転落

ケース2・警告ブロック沿いを歩いていて、人や柱を避ける際にブロックから外れ転落

 

ほかにも、島式ホームで降車後、階段に向かう途中で、乗客をかき分けて進んでいるうちに方向を失い、反対側のホームから転落するケースも報告されています。

これらは、中央に触覚ガイドがあれば防げる可能性が高い事故です。

 

(理由その2) 現行ガイドラインが「ホーム上の移動」を想定していない

現在のガイドラインでは、誘導ブロックは「階段から最寄りドアまで」の敷設が基本です。

しかし実際には、

・乗車駅と降車駅で階段位置が異なる

・乗り換えのためにホームを移動する必要がある

など、視覚障害者もホーム上を線路と平行に歩かざるを得ません。

ホーム中央ブロックは、斜め歩行を防ぎ、ホーム端から離れた安全な歩行ルートを確保します。

 

3. よくある懸念6つと、そのことへの回答

懸念その1:中央ブロックと警告ブロックを誤認するのでは?
①形状による識別が可能。

点状(警告)と線状(誘導)のブロックはJIS規格で明確に区別されており、

多くの視覚障害者が足裏で識別できることが実証されています。

もし識別できないという前提に立つなら、全国の歩道や駅に敷設されている既存の点字ブロックも見直さなければならないということになります。

②位置による識別が可能。

階段からホームに降り立ったとき、正面にあるのが誘導ブロックです。

そこで左右に移動しない限り、ホーム端の警告ブロックにたどり着くことはありません。

つまり、位置関係からもホーム中央ブロックとホーム端警告ブロックを識別することができます。

警告ブロックはホーム端から約80cmの位置にありますので、降車時も降りて2、3歩先にある点字ブロックが警告ブロックだということは、その位置からもわかります。

 

懸念その2:中央には柱や売店があって危険では?
①柱について

白杖には障害物検知機能があり、柱の位置を把握することは歩行訓練の基本です。

また、柱はホーム端にもありますが、端で迂回する方が転落のリスクが高まります。

 

②売店、そば屋など

近年はホーム上の売店自体が減少しています。

仮にあったとしても、壁面を伝って「コ」の字に迂回すれば、ホーム端に近づかずに通過できます。

 

③待合室・ベンチ

待合室やベンチは視覚障害者も利用しますので、むしろそこまでの誘導が必要です。

同時に、柱もそうですが、自分の位置を把握するための「ランドマーク」としても役立ちます。

 

④自動販売機・看板

中央ブロックが既に敷設されている東京メトロ有楽町線「護国寺駅」では、自動販売機や看板は中央ブロックと警告ブロックの間に配置され、動線を妨げていません。

 

懸念その3:迂回すると方向感覚を失うのでは?

視覚障害者は歩行訓練を通して頭の中に「メンタルマップ」を描き、複雑な経路でも安全に移動しています。

売店程度の迂回で方向感覚を失うようでは、そもそも駅まで単独で来ることは困難です。

転落事故の約73%は「慣れた駅」で発生しており、ホーム端を歩くこと自体が危険要因です。

 

懸念その4:狭いホームには敷設できないのでは?

極端に狭いホームは、視覚障害者に限らずすべての利用者にとって危険です。

そのような駅ではホームドアを優先すべきです。

また、ホーム中央ブロックと警告ブロックの間が80cm未満の狭隘部には敷設しない方がよいという研究結果もありますので、ホームの前方や後方で幅が極端に狭くなっている場所には中央ブロックを敷設する必要はありません。その場合、乗車駅か降車駅のどちらかの広いホームで移動するのが賢明です。

 

懸念その5:中央ブロックがある駅とない駅が混在すると混乱するのでは?

ホームドア、内方線、誘導ブロックなど、すべての安全設備は整備過程で混在してきました。

混在を理由に整備を止めるなら、どの安全対策も進められません。

重要なのは、整備状況を周知しながら段階的に事故を減らしていくことです。

 

懸念その6:中央ブロックの整備でホームドア設置が遅れるのでは?

誘導ブロックの敷設費は1mあたり約1.6万円~数万円で、1番線あたり平均7.1億円のホームドアとはコスト構造が全く異なります。

中央ブロック整備がホームドア設置を妨げるとは考えにくいと言えます。

そもそもホームドアと点字ブロックを天秤にかける考え方自体が誤りです。

駅ホームの安全対策としては、ホームドア設置の見込みがあるのか、駅員は常駐しているのかなど、駅の規模に応じた現実的な対策を講じる必要があります。

 

4. 歩行訓練との相乗効果

現在の歩行訓練プログラムは電車の乗降に重点が置かれており、
ホーム上の長軸方向の移動訓練が十分に行えない状況があります。

ホーム中央ブロックが敷設されれば、長軸方向の歩行訓練が可能となり、
訓練の質が大幅に向上します。

これはヒューマンエラーの減少につながり、事故防止に大きく寄与します。

 

5. 新技術との相乗効果

ナビレンスやコード化点字ブロックなど、スマートフォンを活用した誘導技術は、
現在ホームドアのある駅にしか導入されていません。

その理由は、ホーム端を歩くことが危険であり、
スマートフォンと白杖を同時に扱うことが難しいためです。

ホーム中央ブロックがあれば、これらの技術を安全に活用でき、
デジタル誘導の可能性が大きく広がります。

 

《まとめ》安全な選択肢を増やすために

ホームドアの設置を推進していくことが大切なのは言うまでもありません。

並行して、ホームドアの設置の見込みがない無人駅を中心に、ホーム中央ブロックを敷設していくことは、それぞれの駅の実情に応じた現実的で効果的な一歩といえます。

ホーム中央ブロックは、既存設備を損なうことなく新たな安全ルートを提供し、歩行訓練やデジタル誘導技術とも高い相乗効果を発揮すると考えられます。

視覚障害者が安心して移動できる環境を整えることは、すべての利用者にとって安全性の向上につながります。

転落事故を一件でも減らすために、私たちは「できる対策から着実に進める」という姿勢を共有し、利用客数の多い・少ないに関わらず、駅の実情に応じ、段階的に安全性を高めていく必要があります。